自己中心的論評「School Days」(アニメ版)

 一昨年あたりから何かと話題の「School Days」だが、友人からDVDを借りて一気に観た。というか、続きが気になって途中で止める気にはなれなかった。クォリティ的にはていねいに作ってあるし、キャラクターデザインと話のギャップが面白くて、けっこう良い出来なのではないかと思った。
 確かに、主人公の誠は最低な男だが、私はそれほど嫌悪感を抱かなかった。残念な事だが、これまで、これくらいに無責任で身勝手な男をそれなりの数、見てきたからだ。何人もの女の子を弄んで傷つけても全く反省しない、子供ができたら責任も取らずに逃げる、そんな連中を何人も見てきた。だから「単なるアホで救いようのない若者」としか思えなかったのだ。
 ただでさえ、「やりたい盛り」の年頃なので、あれだけ周りから女の子が寄ってきたら、ああいうふうになってしまうものだろう。しかも、後先考えない優柔不断で無責任なバカという設定なので、ああなるのは自然だと思う。そういう点で、別に「誠は最低の主人公」という気はしなかった。確信犯的にバカとして設定する事で、後のカタストロフに話を繋げるのが自然になっているから、キャラ設定としては成功していると思うし、最後の惨劇がある意味でのカタルシスにもなっているのだから。
 ところで、最後のシーンは残虐すぎるというのだが、私はそうとも思えなかった。放送局としては、血の量の多さとか、刃物で斬りつけるシーン、最後の猟奇的なシチュエーションに対して臆したのだろうが、スプラッター映画を見慣れた身としては、それほどの衝撃や危険性は感じなかった。
 それよりも、ヒロインの言葉が他の女子からネチネチと嫌味や陰口でいじめられるとか、性行為を盗撮して上映会をし、当事者達のプライドや体面をズタボロにする、「前から好きだった」という身勝手な理由で言葉を一方的に強姦してしまうといった「人の悪意」のほうが、道徳的にマズイのではないかと思った。最後の猟奇殺人シーンを真似するヤツはいないが、そんな悪意に満ちた嫌がらせやいじめ行為を真似するのは簡単だし、人に与えるダメージも大きいと思う。カットするのなら、そういう心理的な残酷シーンこそを規制すべきだったのではないだろうか。
 まあ、本質的には、高校に舞台を移したドロドロ系のソープオペラか二時間ドラマだと思うので、作品全体のストーリーとしては、「こんなものだろう」とは思った。だが、普通は省略されてしまいがちな誠の性格が豹変してゆく様や、言葉や世界の精神が壊れて行く過程をていねいな演出で描いているので、ある意味では金字塔的な作品かも知れないとは思う。実際、もう一度最初から見直して、主役の三人が壊れて行く過程を観察したいと思っているし。
 でも、言葉の性格が、夢見がちで恋愛に対する幻想が大きすぎるあまり、ストーカーと化してしまうというのは、見ていて辛かった。たしかに、奥手で引っ込み思案なお嬢様と付き合うのは、男としては手がかかるし、荷が重い。まあ、そういう設定にしているからこそ、途中でのストーカー的な恐怖をリアルな物にしているし、超バッドエンドと、後味の悪い猟奇的なエンディングを説得力あるものにしているのは確かなのだが。
 その一方で、世界や乙女、刹那の態度にはリアリティが感じられた。こちらのほうは、普通に好きな男を取り合う恋愛劇であり、愛憎劇として見る事ができる。世界に対する刹那の思いやりと自分の気持ちとの自己矛盾、世界が刹那の気持ちを知った時の崩壊感、乙女が既成事実を作る事で寝取ろうとする描写などは、恋愛愛憎劇としては極めて普通だ。
 この作品は猟奇的殺人で終わるという衝撃的な部分だけが取りだたされるのだが、これはある意味で救いようがある結末なのだと思う。このまま惨劇が起こらず、感情丸出しで三角関係の清算が続くとしたら、そちらのほうが悪夢だ。たぶん、言葉は精神が壊れたままストーカー的な言動を続けるだろうし、世界はヒステリックにわめき散らしてその後の人生を台無しにするだろう。そして誠は無責任で身勝手な態度をとり続けながら最悪の人生を送るに違いない。
 YouTubeでゲーム版のエンディングも何通りか見てみたが、実際のところ、人が死んで終わるエンディングのほうが救いようがあると思った。最も恐かったのは、「ヘタに丸く収まってしまった」という現実的には最悪の状況で終わるシナリオだった。

 これを見た時、世界と言葉が仲良く会話し、誠を共有しているという状況は、まじめに恐いと思った。
 常識的に考えて、あまりにも異様すぎるし、二人とも孕んでしまっているので、後に待っているのは三人の人生が経済的にも社会的にも地の底まで落ちて行く状況しか無いだろうという予感もする。現実的に考えると、これが最も恐いと思う。三人とも、自分たちの異様な状況に気が付かないという「最も精神を病んだ」状況なわけだしね。
 逆に、もっともまともだったのは、刹那のエンディングだろう。これは刹那のキャラ的に、誠に対して優柔不断な態度を取る事を許さないだろうから、その後のことまで見えてしまうと言う点で安心できた。刹那のキャラにも合っているし。

 まあ、ともあれ、表面的な残虐シーン、猟奇シーンのみが取りだたされる同作品だが、私は特にこの点に関して積極的に評価する気はない。逆に、精神が崩壊してゆく怖さ、人の悪意の怖さをていねいに描写し、嫌悪感や恐怖感を抱かせることに成功している点を私は評価したい。
 ともかく、ある意味では神作品なんじゃないのかなぁ。


 この作品のおかげで、後の「Myself;Yourself」や、「true tears」といった人の心理の奥底をかき回す「ヤンデレ」系の作品がジャンルとして確立されたのだろうから、エポックメイキング的な作品である事には違いない。


#しかし、私は言葉様に関しては、絶対に「萌え」は無いぞ! あんな子がいたら、誠じゃないけど、確かに重たいぞ!


#それはそうと、榊野学園の女子制服はデザインが良い。コスが売れたというのもわかる。私も入手できたら悟りを開いてしまうかも(^^;

「School Days」萌え、あり得ない

2008年4月25日に発売される”プレミアム抱き枕『School Days桂言葉西園寺世界カバー&本体&テレカセット”の先行展示が行われる予定だ。これは、抱き枕専用に作られたハンドメイドのプレミアム抱き枕本体に、水着にも使われる伸縮性にすぐれた素材を使用した抱き枕カバーと、テレカとをセットにしたもの。新規描き下ろしの絵柄が、カバーの両面に美しくプリントされている。

”東京国際アニメフェア2008”で人気抱き枕が先行販売

 これはあり得ない。恐い。
 ↓の理由で、可愛いからとか、エロいというだけで、こんなものを入手して使うなんて、信じられない!!
 だってさぁ、言葉様にも世界にも、感情移入なんてできなかったもん、実際。

これ、マジで恐そうなんだけど

様々な病み方をしたヤンデレの女の子が、狂気の愛によってユーザーを「眠らせない」シチュエーションのバラエティCDです。
現在一部で大流行の「ヤンデレキャラ」による「過剰な愛の行為」が、ターゲットとする男性ユーザーの被虐心に強く訴えかけます。

ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD

 あのー、リンク先にあるムービーを見たんだけど、これって凄いね(^^;;
 言葉様とか、竜宮レナとか、そんな感じの「良い感じに狂った子」の目つきとかセリフが恐いんだけど。
 まあ、需要のあるところに供給あり。ヤンデレが好きでも構わないんだけど、ファンタジーの世界で閉じていて欲しいね。真似して本当にヤンデレをやる女の子が出てきたら、私は嫌だ。
 だいたい、「死ぬほど愛されて」って、まかり間違えば自分が「愛されるゆえに殺される」ってパターンになるじゃんね。うー、恐いよう。
 って、このCDを買って本気で楽しんでいるヤツっているの? 不健全だぞう!!