遍歴者賞についての捕捉

 一般な年次SF賞では、普通なら作品に対して与えられるのだが、ストラーニクでは、それまでの功績に対して与えていた賞が存在し、それは授賞式の最後に発表される最も価値が高いとされる賞だった。名前は「Паладин фантастики」(SFの勇士)と言って、これまでにキール・ブリチョフ、ストルガツキー兄弟、ワヂム・シェフネル、ロバート・シェクリイといった錚々たる面々が受賞していた。
 ただ、2005年になってストラーニク自体の行き詰まりと経済危機のためにこの部門は廃止され、しばらくは作品に対してのみ与えていた。しかし、「やはり個人の功績を称える賞が必要だ」と言うことで今年から個人の活動に対して与える賞が新設されることになった。ただ、これまでのような「英雄」に与えるのではなく、視点を変えて現役で活動している人を評価すべきだと言う話になったらしい。したがって、「Паладин фантастики」のような過去の功績に対して与えるというのは伝統的すぎるので、「Собиратель миров」(世界の融合者)という新しいコンセプトで再スタートしたとのことである。で、その第一回目をいただいたのが私だったというわけである。
 この賞の対象は「違う文化を融合させる活動をし、ロシアのSF文化に対して刺激を与えている人物」ということで、受賞対象は外国人に限ったわけではなく、「文化の垣根を越えてプロ作家やファンが抱いているSFの価値観に変革を与えた人物」という定義になっている。だから、村上春樹を翻訳したドミートリ・コワレーニンが再び活動を再開すれば(^^;)、当然のごとく選考の対象になるわけである。
 で、最初の受賞者である私に対する評価理由は、「ソ連時代から欧米以外の国にもSFがあって、しかも盛んであることを知らしめ、ロシアのSF界に対して日本の存在をアピールし、そしてロシアのSF作家やファンが日本を最も親密な国だと感じている現在の状況を作ったことに対して」とのことである。
 というわけなので、どう考えても一生に一回しか与えられるはずがない賞でもあるので、やはり価値としては遍歴者賞の中でも最高の部門であるという認識らしいし、その第一回目の受賞者を私にするというのは、選考委員会全員が賛同したとのことである。
 確かに、新設された賞なので知名度が無いため、ロシアのSF関係のWebサイトを見ていると、「この賞はどういう意味なんだ?」という意見も散見されるが、ただ私のことを知ってくれている人は、「大野で妥当である」とは書いてくれている。
 まあ、そんなわけで、遍歴者賞の中で「Паладин」に代わる最高の賞を、しかも第一回目でいただけたことには感謝するしかない。
 というわけで、これは終わりでも結果でもなく、あくまでも始まりであると考え、今後も活動は続けるつもりである。


21日追記:
もちろんこの賞は私一人の力ではない。この道を教えてくれた故・深見弾先生、応援してくれたご遺族の方々、そして日本における活動で協力してくれた方々(大山さん、富田さん、久保さん、森田さん、合田さん、佐藤さん、そして最高の協力者である宮風君)全員のおかげだと思っている。
みなさんに対して、心から感謝の意を表明させていただく。ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

俺に関する噂

 というわけでも無いんだけど、ロシアの媒体に文章を投稿したり寄稿していたら、いつの間にかOZON.ru(ロシアではAmazon並に大きなオンライン書店)に私の項目ができていた。ストラーニクの写真が無いかと探していたら見つけてしまったよ。これは知らなかったなぁ。