移っても健在

 格闘モノには知れ渡っている隠れた名店に大沢食堂がある。キックボクシング全日本バンタム級初代王者の大沢昇(リングネーム。極真時代は藤平昭雄)さんが経営しているお店である。
 今年の春に巣鴨から千石に移転したのだが、移転後のお店を見てみようと早速出かけてみた。店に入ると、変わらず現役時代のチャンピオンベルトを腰に巻き、トロフィーを掲げた大沢選手の大きな写真が飾ってあった。
 何と言っても、ここの「おすすめ」はカレーライスである。大沢食堂の中辛は、普通のお店の大辛か激辛並みの辛さなのだが、さらに大辛と極辛があるという凄いメニュー構成なのである。
 しかし、ただ単に辛いだけの物を我慢して食べるというマゾ的な要素は、大沢食堂に限って言えば無い。辛い中に、しっかりとした旨味があるのだ。
 カレーのおいしさを十分に堪能し、勘定を済ませて出ようとするとき、変わらず元チャンピオンは、こちらに優しい笑顔を向けて「ありがとうございましたぁ」と言ってくれた。