人はポジションで変わる

 id:ponjpiさんがエントリ、プーチンの今後にて、下記のように書かれている。

官僚的で冷たい印象のプーチンがそんなに人気なのかと。お土産って、権力者の人気を反映するんだと思います。91年の夏にソ連へ行ったとき、マトリョーシカが、レーニン-スターリン-ブレジネフ-ゴルバチョフそして一番デカイのがエリツィンになってました。

 私も91年の秋にロシアへ行き、同じマトリョーシカを見ました。エリツィンへの期待が高い時でしたね。
 少なくとも、最近の三人の指導者には、それぞれ良い面と悪い面を両方持ち合わせていて、評価に困るところがありますね。

  • ゴルバチョフ 改革の先陣を切った。ただ、ソ連の枠組みでやろうとして失敗した。
  • エリツィン とにかく革新・改革路線を推し進めてソ連を解体した。しかし、経済的な失策は見逃せない。
  • プーチン ロシア経済を建て直し、国際的な影響力を回復させた。チェチェン紛争の強権的な制圧は汚点。

 ただ、プーチンチェチェン対策に関しては、ロシア国内でのテロが悪化したという状況もあるので、泥沼化した後に関しては、一方的にロシアのせいだと断言できないとは思っています。劇場占拠事件とか学校占拠事件など、ひどかったですよね。
 しかし、紛争→制圧→テロ化→泥沼化という流れは、アメリカが犯した失策と全く同じですから、言い訳のきかない失策だと評価されるべきでしょう。
 ロシアでは、新たに指導者が現れるたびに大きな期待を持って迎え入れられているような印象があります。ソ連時代の「誰がやったって変わりはしねぇよ、ケッ」という感じでは無くなったというか。
 今、ゴルバチョフは、海外からの評価こそ高いのですが、ロシア国内では空気のような存在になっていますよね。それは一時的に経済的なカタストロフを引き起こし、弱者切り捨てのようなことをやってしまったので、その点への反発によるものだと考えています。
 エリツィンに関しては、ゴルバチョフ路線よりも一歩進め、完全な市場経済への移行という点、そして例のクーデター騒ぎの時の毅然とした態度などで評価を上げましたね。その後は……ですが。
 プーチン人気は、その実力への評価もありますが、イケメン、文武両道、若き豪腕政治家という「スーパーマン的な人物」ということで、一般への人気が高いという部分もあるようですね。

やっぱりプーチン首相=メドベージェフ大統領体制でいくのかなぁ…。二重権力は混乱のもとなので、メドベージェフに頑張ってもらいたいですけど

 二重権力化するのかどうかは、今のところまったくわかりません。ただ、私はプーチンの人物像に関しては高く評価していて、そのへんの「引き際」は心得ている人だと思います。
 あと、エントリ、大統領後継者にあった、以下の文章に興味を持ちました。

しかしね。ロシアではポジションがその人を作るっていうか。プーチンが大統領に就任した当時も、「エリツェンのあやつり人形」と思われがちだったんですが、あれよあれよという間に大統領としての手腕を発揮しましたからね…。それはプーチン自身が一番分かっていることで、なおかつメ氏を指名した、ということなわけです。

 ポジションが人の能力を引き出す、というのはロシアに限らず一般的に見られる現象でしょう。
 ゴルバチョフが書記長に就任した際も「保守派」だと見られていましたが、実際には逆でした。エリツィンはそれまでの評価からクリーンなイメージがありましたけど、実際にはグダグダにしてしまいました。そしてプーチンは元КГБということもあり、強権的な人物だと目されていましたが、実際にはソ連→ロシアへと続く中で最も名宰相だったとも言える実力を発揮しました。
 先にも書きましたが、プーチンに対しては「引き際」を心得ている人だと思っているので、しばらくは首相としてメドベージェフを補佐すると思うのですが、二重権力とか院政にはならないんじゃないかと予測しています。そういうことをする危険性は、プーチン自身もよくわかっているでしょうし。
 何にしろ、ポジションが人の能力を開花させるというのは、現象としてよく見られることなので、メドベージェフも存在感を見せられるようになるのではないかと考えています。

チェチェン やめられない戦争

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