釣れますか? 釣られてみよう。

「でも、男たるもの不惑を過ぎたなら、ハルキストを卒業すべきです」
そう指摘するのは、「ダメリーマン講座」を主宰するコラムニストの白井由佳さん。白井さんもかつては、大の春樹ファンだった
「私が知るハルキストの男性たちは、40歳を越えた今でも、自分に自信がなくて打たれ弱く、社会とコミットするのが苦手。原因は、村上作品ではよくモチーフになる、現実とは違う“別の世界”にドップリだったからです。30代後半から40代は、現実の人生で、さまざまな難題課題がリアルに降りかかってくる時期。いつまでも村上作品に浸っていると、社会から取り残されてしまいます」

“だから”村上春樹が好きな男はダメなんだよ

 あのー、私は「風の歌を聴け」以来、ずっと村上春樹を読んできたし、今でも読んでいる。
 ちゃんと村上春樹作品を読んでいれば、実存の問題を正面から扱っている事に気がつくはずだ。それをライトノベルのような感覚で読めるという神経の方が信じられない。(しかも、カーヴァーやフィッツジェラルドのような現代アメリカ文学を積極的に紹介した功績とか、チャンドラーやヴォネガットについて積極的に発言しているという事も知らないんだろうな)
 読者側の理解力と読解力が試されるね。
 ハードボイルド文体と、トレンド描写、そして現代的なテーマの融合があってこそ、「世界の村上」になっているのに、こんな薄っぺらな解釈で発言できる度胸は認めよう。
 ただ、自分の無知を世間に晒しているだけの行為だとは永久に気がつかないだろうけど。
 で、私は四十を過ぎても村上春樹は読んでいるし、打たれ強い方だし、社交的だと言われている。そして、村上春樹は、決して現実の問題から逃げてはいない。ドキュメンタリの「アンダーグラウンド」を読んでいないのだろうか。
 「ノルウェイの森」だけを読んで、「病んだ人の恋愛小説」などと考えているんじゃないの?
 あれはあれで、精神疾患と、社会とのギャップを描いた先進的な作品だったと思うんだけどね。
 まあ、この記事の読者が、こんな中身のない記事で満足できるんなら、それはそれで良いんだけど、「なぜ村上春樹が世界で認められているのか」という神髄を知らないままで終わっちゃうんだね。
 もったいない話だねー。
 と、「ゲンダイ」の記事にわざと釣られてみるテスト。

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

#しかし、理解できないから貶すというのは浅ましい根性だよね。