リアルER

 ディアゴスティーニから発売されたDVD「Inside Human Body ③脳手術」を人から借りて観た。
 これは、実在するてんかんの患者に対して施す脳手術を、そのまま記録したビデオである。したがって、最初にメスで皮膚を切り取るところから始まり、頭蓋骨を開け、大脳を切除するところまで、事細かに見ることが出来る。
 ERなどで手術のシーンなどはよく見かけるのだが、実際の外科手術を目にする機会など、まずあり得ない。そういう意味では、非常に貴重な映像だと言える。ただ、問題は、やっている事が事だけに、刺激が強すぎるという点だろう。
 皮膚を切ってめくり、その下にある筋肉も切って頭蓋骨を露出させ、ドリルで穴を開けたあとノコギリで開ける。そして膜を切って大脳を露出させ、プローブを当てながら、言語野がどこにあるのかを質問で探り(何と、患者の意識はしっかりしているのだ!)、患部を特定して大脳を切除する。
 言葉で書くと、これだけの手順なのだが、細心の注意ときめ細かな手順で、たいへん几帳面に作業が進められて行く。
 興味深かったのは、大脳にプローブで電流を流して言語野を特定する作業である。電流を流された箇所は、そこだけ働かなくなるので、助手が絵を見せて患者にそれが何かを答えさせるのだが、言語野に電流が流れている時には、何も答えられなくなってしまうのだ。
 人間の認識とか、精神活動、意識といったものがすべて大脳にあるのだということがよくわかる。また、同時に、この大脳から、人間はどれだけ多くの物を作り出してきたのかということを考えた時、画面に映っている白みがかったプリンか白子のような物の偉大さを実感した。
 人間、というか、生物って、本当に上手くできている。この奇跡のような存在が偶然の産物なのか、必然的な産物なのかは、人ぞれぞれが文化的・科学的な価値観の元に信じているものがあるので、誰も万人が納得するような形で決定的に証明することはできないのだが、何はともあれ、結果として存在している生物の不思議を再認識した。