天国でも地獄でもないよ

モスクワ市内だけですしバーや日本食レストランが500軒以上、書店では村上春樹がベストセラーと、ロシアは空前の“日本ブーム”に沸いている。
「日本文化に興味を持つきっかけはアニメや日本車、経済大国であることなどさまざまだ」としたうえで、「多くの人がしばしば(日本文化の)形式的な面にこだわって精神性にまで思いがいたっていない。そこにこそ活動の意味がある」と話す。

空前の“日本ブーム”に沸くロシア 文化紹介の活動に熱気

 なぜだか知らぬが、概して私の知り合いのロシア人は日本のことをよく知っている。
 古い歴史を持ち、独自の精神文化をはぐくみ、独特の芸術や美学を有し、かつては英雄たちが群雄割拠して、今ではハイテクとサブカルで未来の最先端を行く謎の国。……なのだそうだ。
 まあ、あながちそのイメージは外れではないが、美化しすぎていることも確かだ。
 知り合うまでは、「遠くにある謎の国から来た男」ということで、それなりに興味を持たれるのだが、話をするにつれ、ロシア人と日本人のメンタリティがもの凄く近いということがわかり、「なんだ、俺らと変わらないじゃん」という態度になってくれる。付き合う側としても、それは有り難いことなので、今の日本のイメージには感謝している。カラオケとスシとオタクは、そのまま通じてくれるので便利だし。
 大人のほうはそれで良いのだが、ロシアの子供たちのほうが問題だ。
 やはり、世界史で日本のことを習っていると、侍が割拠した国というイメージをもたれてしまう。その一方、テレビで放映されている「トランスフォルメル」(元は「トランスフォーマー」なのだが、今ではロボットアニメをこう総称している)を作っている国というイメージもあるので、「何だか訳がわからない」という状態にあるようだ。
 で、その子たちが育つと、一部は「モエ」(これもすでに世界共通語)に目覚め、日本文化に接してくれるのだが、ここでもまたゲームや漫画、アニメといった「オタク」というフィルタを通してしか見られないので、少し残念ではある。
 先日紹介した秋葉いつきちゃんなどは、積極的に垣根を越えてきてくれて、実際に日本の現状を見て正確にロシアへ報告してくれるパイオニア的な人だと思うのだが、そういう人たちが増えてきてほしいと切に願っている。
 また、その逆も同じで、国境を越えてロシアの現実を見て、ロシアの正確な事情を報告してくれる日本人がもっと増えてくれれば良いなぁとも思っている。
 そういう人、いたら私まで連絡して! お願い! 恒常的に手が足りないの!