私は祈らない

死者をしのぶ行為は本来、すぐれて個人の心の問題だ。しきたりや世間体を離れ、簡素でも自分に正直に、気が済むようにすればいいとも思う。

天声人語(2007年06月25日)

 よくぞ書いた。
 私は無宗教なので、絶対に、いかなる時にも「お祈りします」とは言わないし、書かない。信じてもいない神や仏に対して祈っても意味がない。何かと見かける「ご冥福をお祈りします」という言葉は、それを発した人の信心から出ない限り、虚しいものでしかないと思えるのだ。
 だから、感情的な問題としてお悔やみを言うことはあるし、偲ぶこともあるのだが、その際には「お祈りします」とは絶対に言わないようにしている。
 それが無信心者としての誠実さだとも思うのだ。安直に、その時だけ神仏を持ち出すのは、都合が良すぎる「虚しい世渡りのための言葉」だとしか考えられない。

日本人はなぜ無宗教なのか (ちくま新書)

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