そこは笑う所じゃない!
大槻ケンヂの「変な映画を観た!!」(asin:4480423249)を読んだ。世間からは相手にされないC級からZ級映画が大好きな私にとって、たいへんうなずけるほんだった。
ただ! 「8mile」のラップバトルに関して「ばかばかしすぎて笑った」という記述には腹が立った。故意なのかどうかはわからないが、文化的な背景への無理解をそのまま書き、一方的にバカにしているだけだからだ。
もともと、喧嘩というのは暴力だけのものではない。
リアルなところとしては、ヤクザが実力での抗争を避けるために将棋や麻雀で「代打ち」を立てて勝負を決めたという話が日本にはあるし、アメリカでも例えばブレイクダンスは、ギャングや囚人が実力行使の代わりとしてバトルをしたというのが始まりだ。ちなみに、ブレイクダンスバトルでダンサーがズボンの裾を上げるのは、ギャング同士の勝負において足首のホルスターに銃を隠していないということを示すために始まった習慣である。
また、暴力や肉体によらない「ルールのある喧嘩」を競技にしている例もたくさんある。「ディベート」はルールの元でお互いに誹謗し合う競技だし、「詩のボクシング」は詩作の腕を競い合う競技だ。ラップバトルも攻撃的なリリックで相手を打ちのめすことを目的とした競技で、これも「ルールのある暴力によらない喧嘩」なのである。
実際、ラップバトルはもう数十年の歴史があるれっきとした文化なので、無知なのが理由であるにせよ、それを笑い飛ばすというのは、その文化に対する侮辱的な行為だ。愚かだとしか言えない。
何でも笑い飛ばして突っ込んでいれば読者のウケを取れるというわけでも無いのに……。
と、「8mile」が大好きな私は思ったのであった。
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