反戦も宅配ピザも同じビラなはずだ!

 例によって、またまた不条理な判決が出たわけだが、この事件に対して社説で言及したのは二紙のみ。もっと注目すべき判決だと思うんだけどねー。
 私は東京新聞の主張を支持する。何だか、読売新聞の社説は、歯切れが悪いし。
 だいたい、ビラを投函しただけで拘束されるって……これって酷すぎない? だったら、マンション物件のビラ、邪魔だから配っているヤツを拘束してよ>警察
 理不尽な権力の行使って、許されて良い事じゃないよね。

反戦ビラ有罪 自由を萎縮させるな
 自衛隊イラク派遣に反対するビラを官舎で配った。最高裁は住居侵入罪にあたるとした。有罪が確定する。「ビラ配布有罪」が続いている。この積み重なりが、表現の自由をさらに息苦しくする。
 憲法二一条が表現の自由を保障している。イラク派遣は国会でも大問題となった政治テーマである。「反対論」を唱えるビラ配布も許容されていい。
 ただ、二〇〇三年から〇四年にかけて配った場所が、東京都立川市の旧防衛庁の宿舎だった。「関係者以外立ち入り禁止」の表示があり、警察にも被害届が出されていた。
 一審は住居侵入を認めつつも、住民の被害が極めて軽微だとして、刑事罰を科すほどではないと無罪判決を出した。二審は逆転有罪となり、最高裁も「(住居の)管理権者の意思に反して立ち入った。私的生活の平穏を害する」とし、有罪判断を下した。
 判決には、具体的にどのように平穏が乱されたか、どんな精神的被害があったか、言及はなかった。刑罰法規を形式的に当てはめた判決といえないか。政治ビラは意見を異にする人々に対しても、発信する自由があることを留意したい。被告たちは、自衛隊員にこそ「反対」のメッセージを伝えたかったようである。
 見過ごせないのは、証拠隠滅の恐れを理由に、七十五日間も拘置されたことだ。科されたのが罰金刑なのに、それほどの長期間、拘束する必要はあったのか。
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル本部は、「反戦ビラ」の被告たちを日本で初めて「良心の囚人」と認定した。非暴力で権利を行使しただけで、拘束された人々のことである。ミャンマー民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんや、旧ソ連ノーベル平和賞の故サハロフ博士らも名を連ねた。
 共産党の印刷物を配布し、住居侵入罪に問われた東京都葛飾区の僧侶も、一審無罪が二審で逆転有罪。共産党の機関紙を配った社会保険庁職員は国家公務員法違反で、有罪判決。有罪が続く。
 まるで「反体制」や「左翼」と呼ばれる人々を狙い撃ちしている印象を与えかねない。これでは、政治について声を上げ、それを伝達することすら、ためらいが生ずるのではないか。
 多様な意見を自由に述べることこそが、民主主義の根幹である。“良心の囚人”が増えれば、自由は必ず萎縮(いしゅく)する。

  • 読売新聞

ビラ配り有罪 一つのルールが示された
 立ち入りを強く拒まれている場所でビラを配れば犯罪になる――。日常生活の一つのルールとなる司法判断である。
 最高裁は、自衛隊イラク派遣反対のビラを自衛隊官舎で配り、住居侵入罪に問われた市民団体のメンバー3人の上告を棄却した。罰金10万〜20万円の有罪とした2審判決が確定する。
 ビラには、「殺すのも殺されるのも自衛官です」などと書いてあった。官舎に住む自衛官やその家族が読んだ時の精神的苦痛も決して軽くはないだろう。それを考えれば、妥当な判決である。
 この裁判は、表現の自由と、住民が平穏に暮らす権利とのどちらを優先させるかという観点から注目されていた。
 最高裁は、ビラの配布を、憲法が保障する「表現の自由の行使」と認めた。だが、一方で、「たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、他人の権利を不当に害するようなものは許されない」と厳しく指摘した。
 官舎には、関係者以外の立ち入りやビラ配布を禁じる掲示板があった。それにもかかわらず、メンバーは月1回の頻度で、各戸の前まで立ち入り、新聞受けに配布を繰り返した。官舎側は配布のたびに、警察に被害届を出した。
 こうした経緯を踏まえれば、住居侵入と言われても仕方がない。最高裁も、「私生活の平穏を侵害した」と結論付けた。
 1審は、住民が受けた被害は軽く、「刑事罰を科すほどの違法性はない」として無罪としたが、2審は「違法性は軽微でない」として、逆転有罪としていた。
 マンションなどのポストには、宅配ピザや不動産情報など、様々なチラシやビラが投函(とうかん)される。こうしたチラシやビラを重宝にしている住民も多い。
 ピンクチラシの配布は風俗営業法で禁止されているが、一般のチラシやビラの配布まで警察が摘発するのは、現実的ではない。
 マンション住民には、1階の集合ポストに入れるのは構わないが、各戸の新聞受けに入れられては迷惑という人もいるだろう。配布する側にも節度が必要だ。
 最高裁は、政党の議会報告などをマンションで配布し、住居侵入罪に問われた男性の事件も審理している。1審は「違法性はない」として無罪だったが、2審は「住民の許可を得ない立ち入りは違法」として逆転有罪となった。
 この最高裁判決が示されれば、チラシやビラ配布の法的ルールは、より明確になるだろう。