Winny裁判、やっとまともになったか

インターネットを通じて映像や音楽を交換するソフト「ウィニー」を開発し、著作権法違反幇助(ほうじょ)の罪に問われた元東京大大学院助手、金子勇被告(39)の控訴審で、大阪高裁は8日、罰金150万円とした一審・京都地裁判決(06年12月)を破棄し、逆転無罪判決を言い渡した。
小倉正三裁判長は「著作権侵害が起こると認識していたことは認められるが、ソフトを提供する際、違法行為を勧めたわけではない」と指摘。価値が中立な技術を提供しただけでは、幇助罪は成立しないと判断した。
あらゆる技術は悪用される可能性があり、開発者を罰するのは技術の発展を阻害するもの」と批判していた。

「ウィニー」開発者に逆転無罪 大阪高裁

 確かにP2P技術はこういう事にも使われる可能性もあるので、慎重に実装すべきものだと思っている。だが、我々は現在、Skypeメッセンジャーなど、P2P技術によって大きな恩恵を受けている。P2P技術によるファイル共有にしても、著作物の交換をする人物が犯罪を犯しているのであって、仲間内で同一のファイルを共有するという方法はビジネスなどでも有効に使えるはずである。
 それに対し、著作権法違反者を逮捕するところまでは理解できるのだが、開発者を逮捕する理由はどこにも見あたらなかった。だから、私はこの事件に対し、「開発者を罪に問うのは間違っている」と書き続けてきた。
 確かに、反対する意見も多かったが、議論の中では、P2P技術には何の罪もないという点が焦点になった。DSPやハイグレードプロセッサがミサイル誘導やロボット兵器に使われているとして、プロセッサの設計者を「殺人幇助」に問えるだろうか?
 たとえばGPLは、その点で徹底している。オープンソースソフトウェアが「いかなる目的であっても使用することを制限しない」というのだ。軍事目的、兵器開発、違法行為であろうとも、使う側の責任であって、ソフトウェアに罪は無いと宣言しているのだ。
 「価値が中立的な技術」という観点、これを忘れてしまっては、判断が狂ってしまう。たとえ、それが暗に何かを意味しているにしても、特定の技術を実装しただけで罪に問うような社会であってはならない。
 秋葉原ダガーナイフ事件によって「両刃のナイフを一律禁止」にしたら、ダイバーや牡蛎の殻剥き現場が迷惑したというのと似ていると思う。この事件にしたところで、両刃のナイフに罪は無いはずなのだ。
 事件が起こったからと言って、その焦点となるのか何か、それを正確に見極めなければ、窮屈な社会になると考えている。