しっとりとしたドラマ「大魔神カノン」

    大魔神カノン
 なかなか本題に入らないので不評っぽいけど、私は丁寧に描写を重ね、観ている側に感情的な共感を持たせる作劇方法は嫌いじゃない。
 カノンがいかにして人に騙されて絶望的なまでの人間不信にいたるのか、そこらかいかに「信頼する」という感情を取り戻すのか。ここをおざなりにすると、大魔神が目覚めて暴れて終わりといった単純すぎる話になってしまう。
昔に作られた映画の大魔神では権力が敵だった。しかし、今の社会では人と人との繋がりの薄さや無関心が社会を蝕む問題なのだと思う。
 確かに社会の裏でうごめく怪人を倒すのは大魔神かもしれない。
 だが、大魔神を目覚めさせるためには、まず主人公のカノンが、今の社会が抱える不信という敵を自分の心の中で許し、人や社会への信頼を取り戻さなければならない。
 その葛藤や変化も含めて、カノンと大魔神の戦いが平行して描かれているのだと私は考えている。
 今日の回、完全に打ちのめされ、絶望したカノンの心が溶け始める予感があって、かなり良かった。
 そして、カノンが心の底から「人を救いたい」と願いを込めて祈り、歌い、大魔神が目覚める時こそが、このドラマにおける最大の見せ場になるはずだと信じている。

大魔神カノン (1) (角川コミックス・エース 180-3)

大魔神カノン (1) (角川コミックス・エース 180-3)