今だからこそ大切な「タナグラのダーモクと、ジラード」
新スタートレック(スタートレック・ザ・ネクストジェネレーション)の第102話「謎のタマリアン星人」(原題は"Damok")は、昔も今も変わらず、その時代に生きている人々に対し、平和に生きるための努力は決して無駄なことではないと教えてくれる。
アメリカでは、独立記念日ということで、↓のようなイラストがFBにアップされていた。
日本語での吹き替えでは、「タナグラのダーモクと、ジラード」と訳されていた。
ここで話しているのは、タマリアン人の代表。宇宙艦隊とタマリア人とは何度か接触があったものの、言葉がまったく通じないので友好関係どころか何の話もできない状態だった。そこで、エンタープライズのピカード艦長がタマリアの宇宙船と接触を試みる。
そうしたら、ピカード艦長は未知の惑星に一人、転送されてしまった。当然、他のクルーは誘拐された艦長を救いだそうとするのだが、タマリアの技術のほうが圧倒的に上回っているため、何の手出しもできなかった。
一方、未知の惑星に転送されたピカード艦長は、一人のタマリアン人と出会う。タマリアン人は言う。
「タナグラのダーモクと、ジラード」
もちろん、ピカード艦長には何のことか、さっぱり理解できない。タマリアン人は続ける。
「シャカ。壁は崩れ落ちた」
やっぱりわからない……。
そんなコミュニケーションが成り立たない二人の前に謎の怪獣が現れる。ピカード艦長とタマリアン人が協力しなければ倒すことができない。
極限の状態で徐々にわかってくるお互いの意志と言葉の共通性。
ピカード艦長は、タマリアン人の言葉はすべて神話や歴史の話を元にした例えで表現しているのだと気がつく。
二人はお互いに理解し合うことに成功した。だが、タマリアン人は怪我をして命を落としてしまう。
ピカード艦長にとって、命をかけて相互理解に努めようとしたタマリアン人は、もう完全に同志だった。
見事な寓話だと思う。ちなみに、FBにアップされた上のイラストには、こんなキャプションが付けられている。「Need I say more!」。
「わからないから不気味、危険な存在かもしれない」と疑心暗鬼に陥っているのは愚かなことだと思う。このエピソードが教えてくれるように、「わかろうとする努力を惜しんではいけない」のだ。
全世界的に他国、他者に対して不寛容になりつつあるような風潮が感じられる現在、アメリカ人も独立記念日だからこそ、この言葉を思い出すべきだと思う。そして日本人も、同じ事をするべきだと思う。
新大久保で汚い言葉を大声で叫んでいるだけで満足してはいけない。一方的になじる前に、相手の論理や、日本の社会が本当に自分たちの主張通りになっているのか、再検証してみるべきじゃないの?
「タナグラのダーモクと、ジラード」という意味不明のフレーズには、こんなに熱く語らせてしまうだけの重みがある。
このエピソードはやはり良い出来なので、↓のBOXに収録されている。
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