文化は国境を越える力

ソ連崩壊後のロシアで初めてとなる狂言の単独公演(国際交流基金主催)が24、25の両日、モスクワの劇場で行われ、京都・茂山千五郎家の演技を約900人のモスクワっ子が堪能した。
演目は、主人の留守中に家来の太郎冠者と次郎冠者が酒を盗み飲む「棒縛り」と、気の弱い婿養子をめぐる家族模様を描く「濯ぎ川」。

「狂言」ロシア初公演 演劇に厳しいモスクワっ子を魅了

 能も狂言も、世界に広く認知されている日本の伝統演劇だが、ソ連時代以来、狂言の公演が行われていなかったというのは驚きだ。
 「棒縛り」は動きで見せる内容なので、言葉の壁が無くとも楽しめるだろう。
 「濯ぎ川」は、確かにちょっと難しいかもしれないが、内容が事前にわかっていれば、どこの国でも十分に理解される内容だと思う。
 この演目の選択は、かなり考え抜かれた妥当なものだと思う。
 ロシア人の芸術好きも有名だし、オペラやバレエが庶民の娯楽になっている国なので、選評眼は厳しいと思われるのだが、狂言は、そこでも十分に受け入れられるだけの品質と様式を持っていると思う。事実、受け入れられたようだし。
 ペテルブルグでも公演されるということなので、私の知り合いはみんな観るんだろうな。今年の冬は狂言の話で盛り上がろうっと。