ギロチンの意味を考える

「動き出したら止まらない公共事業」の象徴とされた国営諫早湾干拓事業長崎県諫早市)の主要工事が終わり、20日、干拓地で完工式があった。86年の事業計画決定から21年、ムツゴロウなど希少な生物が生息する干潟が失われ、ノリ不作など有明海の異変との関連も指摘される総事業費2533億円の巨大事業は、「大きな環境破壊を招いた」という批判のなかで節目を迎えた。

諫早湾干拓、完工式 着工18年、「反対」続く中

国営諫早湾干拓事業(長崎)は、科学技術分野の歴史で重要な事故・失敗例として、文部科学省の外郭団体の科学技術振興機構(JST)がまとめた「失敗百選」に選ばれている。
事例概要として「ノリを始めとする漁獲高の減少など、水産業振興の大きな妨げにもなっている」と干拓による漁業被害を挙げ、「走り出したら止まらない公共事業という国民的批判と不信を生み出した」と指摘。諫早湾を分断した干拓堤防や調整池からの排水、干潟の消失などが原因と分析している。

諫早湾干拓、「失敗百選」に 文科省の外郭団体選定

 「環境の命を消すギロチン」と言われた衝撃的な映像から、もう結構な時間が経ったが……。
 あの工事が「絶対に必要だった」とか、「環境被害を起こしてはいない」と言い切れるのは、そう言わないと自分たちの存在意義を失う役人だけだろう。あの工事の主な目的は、水害抑制のためということだが、その有効性が何も示されぬまま、むしろ疑問の声が多い中でなおも強行された。
 その挙げ句が生態系の破壊と、漁業への大打撃。
 国が行う公共事業という箱物への不信感だけを根付かせる事件だったと思う。
 ソ連アラル海を消したのは世界史上最悪の環境破壊事業だったと思うが、それと比較しても、同じくらいに愚かな行為だと思う。