「巨匠とマルガリータ」はSFです!

 SFマガジン2008年7月号のレビュー欄にて、ミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」が文学としてレビューされているが、ロシアでは「ルースカヤ・ファンタスチカ(ロシアSF)」として分類されている。というか、現代のルースカヤ・ファンタスチカの「お手本的作品」とすら言われている。
 同じような作家としてヴィクトル・ペレーヴィンが挙げられるが、この人はまだ現役の作家だし、最初はSF作家として活動していたので、まだ作品はSFとして認識されているはずだ。SFプロパーの作家から方向を変えて文学的な方向に流れたり、世間からの文学的な評価が高まると、すぐに文学側に取り込まれるというか、SF側が手放すというのは、読者にとっても「もったいない」話だとしか思えないのだが……。最近の例では、カート・ヴォネガットミルチャ・エリアーデなどもそういう例に入るかも知れない。
 古い・古くない、世間の認識、他の作品が文学だから、という理由でこの幻想的かつ破天荒なファンタジーを「文学」という位置づけにするのであれば、SF側からの「遠慮」というか「権威に対する萎縮」であると思われる。瀬名秀明氏が冒頭で述べているようなカッコ付きの「SF」だけにジャンルをとらわれるのは、専門誌としていかがなものかと思われる。

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)