確かに利害に関しては不平等なんだよな

 ↓のとおり、米露がお互いにフェアと思えるような取引となると、ABM条約の再締結と東欧におけるMD計画の見直しが無い限り、アメリカばかりが一方的に有利になるんだよな。
 クリントン女史がどこまでがんばってくれるかにかかっているね。 

 オバマ政権は、ロシアの外交政策に一石を投じようとしている。2月2日に宣誓を行い、新たに国務長官の職務に就いたヒラリー・クリントンは、意欲的に、核軍縮を進めようとしている。英タイムズ紙の報道によると、オバマ大統領は、米露両国が核弾頭の数を80%削減、つまり、1000個まで削減するという大々的な提案をロシアに働きかけようとしている。
 核軍縮交渉の鍵となるのは、ブッシュ前大統領が推進してきた東欧へのミサイル配備(MD)計画の見直しとなるだろう。タイムズ紙は、MD計画により、米露の核軍縮交渉は膠着状態にあったと指摘している。現在のところ、オバマ大統領は、沈黙を守っており、今後、配備する予定であるポーランドのミサイル、及び、チェコの米軍レーダー基地について、明確なメッセージを述べてはいない。
 みたところ、核軍縮に関するオバマ大統領の提案に難はない。ひいては、ブッシュ前大統領との違いを効果的に印象付け、アメリカのイメージアップにもつながるだろう。しかし、ロシアとしては、無条件にこうした提案を受諾すべきなのだろうか。国家戦略研究所のレミゾフ所長は、オバマ大統領について、ブッシュ前大統領よりも、はるかに手ごわい交渉相手であると考えている。同氏は、「主導権を取るアメリカは、どちらに転んでも有利である。仮に、ロシアが反対すれば、ロシアは、国際関係における軍事力の維持を求める非人道的な国という地位に甘んじることになる。一方、こうした提案を受諾すれば、ロシアは、飛んで火に入る夏の虫ということになる。アメリカの軍事力は、核兵器を抜きにしても、非常に大きく、それは、ロシアの軍需産業が追いつこうとして追いつけるものではない。アメリカとの軍事力の差を埋めようとするならば、ロシアは、核兵器を増加させるしかない。軍事大国によるロシア不可侵を保障できるのは、核弾頭のみかもしれない。正々堂々と核弾頭を削減しても、アメリカには何の問題もない。核軍縮で、相対的に、アメリカの軍事力は強化される。」と述べる。
 ポーランドチェコにおけるミサイル防衛システムの配備計画は、アメリカの利となる。その計画の実行をアメリカは見直した(年間に40億ドルの費用削減となる)。そして、その代償として、ロシアに核兵器の削減を提案しているのだ。国家戦略研究所のレミゾフ所長は、こうした策略から逃れる方法は1つだけだと述べる。核軍縮交渉が行われる条件として、アメリカは、離脱した弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)に再加盟しなければならない。また、東欧のMD計画をめぐる交渉からは距離を置き、核バランスに影響する国際的なミサイル防衛システムの問題に焦点を戻すことが必要だ。冷戦時代に、米ソの相互不可侵を保障したのは、まさに、このABM条約であった。
 ロシアとアメリカが軍縮・その他に関する交渉を始める時期はすでに熟している。2009年12月には、ロシアとアメリカが1991年に締結した第一次戦略兵器削減条約(核兵器を1万発から5000発に制限)の期限が失効する。モスクワカーネギーセンターの専門家であるBubnova氏は、現在のアメリカとロシアの関係について、この20年間でもっとも悪化していると述べる。オバマ大統領は、米露の関係を重要視していることを示した。これで、両国の協力関係は、発展していくだろう。
 しかし、協力というからには、双方の利益とならなければならない。ゴルバチョフレーガン政権の時代には、軍縮に関する美辞麗句が並んだ。今回の軍縮提案もそれに準じたものだが、裏切るようなことがあってはならない。ソ連崩壊も、アメリカが軍事力を縮小する契機とはならなかった。オバマ大統領のハト派社会主義的なイメージは、世論を第一に考えたパフォーマンスに過ぎない。アメリカの対外政策に変化はない。従来どおり、アメリカは、軍事力増強のため、ミサイル防衛計画に対する不満と金融危機(軍事費の縮小を余儀なくされている)を利用しようと計算しているのである。

オバマ大統領の対露政策