要するに教育者としての認識が甘かったんだ

 図書館とは何か? 学問の自由とは何か? 子どもに本を与えるのは誰か?
 こんな基本的な原則すら忘れ去り、権限のある立場から、不適切な事をしてしまった……というのが事の真相らしい。
 松江市教委の前教育長である福島氏は「配慮が足りなかった」という認識を示しているが、「教育的配慮の必要性」とまで言ってしまった文科省の大臣って……そもそも教育の基本をわかっていないんとちゃう?

松江市教委 福島前教育長に聞く 「配慮足りなかった」
中日新聞 8月24日


 松江市教委が小中学校に漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を求めた問題で、要請当時の事務局責任者だった福島律子前教育長が23日、中国新聞のインタビューに答えた。経緯を振り返り「善かれと思ったが、教育現場などに配慮が足りなかった」と述べた。
――閲覧制限問題の発端を教えてください。
「昨年4〜5月、市内の男性が、作中の日本兵の残虐行為を『事実ではない』と、学校図書館からの撤去を市教委に繰り返し求めてきた。やりとりを録画されインターネットで公開されたが、担当課が『撤去は指示しない』と突っぱねた。昨年8月、同じ男性が市議会に撤去を求める陳情を提出し、市議会が取り上げた。そこで、市教委でも全10巻を入手し読んだ」
――作品にどのような印象を持ちましたか。
「原爆の悲惨さを伝える作品と評価するが、後半を初めて読み性的暴行などの場面に驚いた。子どもへの配慮が必要だと思った」
――陳情は不採用でした。なぜ制限の要請に踏み込んだのですか。
「議会が取り上げた以上、市教委として判断を示すべきだと考えた」
――教育委員会に諮りませんでした。
「要請はあくまでもお願いで、教育長の権限の範囲内と考えたが、認識が不十分だった」
――2度の要請でほとんどの学校が従いました。強制性を伴うと考えませんでしたか。
「強制の意図はなかったが、権限を持つ市教委の発言という点に配慮が足りなかった」
――「表現の自由」に関わる話。誰も問題視しなかったのですか。
「描写に強い印象を受け『子どもへの配慮』の視点に引っ張られた面があった。要請の前に一歩とどまる必要があったが、手続きのまずさに気づけなかった」
――どうすべきだったと考えますか。
「教育委員や学校規模の声を聞き、判断を現場に委ねるべきだった。議論の過程を明確にしなかったため、圧力に屈したわけではないが、結果的に歴史認識を問題にした陳情者の考えに賛同したと受け止められた面もある」
――市教委に2千件を超す意見が届き、大半が要請撤回を望む声です。
「今は判断する立場にない。教育委員会の判断を見守りたい」


 ちなみに、日本国憲法には、次のような条文がある。

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。

 そして、教育基本法には、以下のような記述がある。

第三章 教育行政
(教育行政)
第十六条  教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。


 前のエントリで書いた図書館という存在に対する認識も含め、こういう基本的な事が忘れ去られているという現状に対しては、嘆かわしいとしか言えない。